原田マハ『奇跡の人』感想|信念を貫く女性に、言葉の力に、胸が熱くなる一冊

読書

壁にぶつかっているとき、何かを諦めそうになっているとき——そういうタイミングで読んでほしい本があります。

原田マハさんの『奇跡の人 The Miracle Worker』です。

明治時代の青森を舞台に、弱視の女性教師が不可能と思われることに挑んでいく物語。

読み始めたら深夜1時半まで止まらないほど面白かったです。

この記事では、読みどころや私の感をネタバレなしで紹介します。

  • 『奇跡の人』はどんな物語か
  • 主人公・安の”強さ”はどこから来るのか
  • 読み終わった後に感じたこと

『奇跡の人』ってどんな物語?

舞台は明治時代の青森県と、現代の青森県。

物語は現代のシーンから始まり、少しずつ明治時代へと遡っていく構成になっています。

主人公の安(あん)は、明治時代に、弱視というハンディキャップを持ちながら、幼少期をアメリカで過ごした日本人女性。

帰国後、津軽の旧家に家庭教師として赴任し、そこで蔵に閉じ込められた少女・れんと出会います。

目が見えず耳も聞こえないれんに、安は言葉と文字を教えようと奮闘する物語です。

まずは、あらすじだけ読んで気になった方は、ぜひ図書館か書店で手に取ってみてください。

安という女性の、揺るがない芯

原田マハさんが描く女性は、いつも「折れない」と感じます。『奇跡の人』の安もそうです。

安は弱視というハンディキャップを持ちながら、幼少期をアメリカで過ごした女性。差別やいじめも経験しています。

それでも彼女は、自分の信念を一度も手放しません。

明治時代という、女性が声を上げることすら難しい時代のなかで、周囲が「無理だ」と思っていることに毅然と立ち向かっていく。

その姿に、読んでいる間ずっと背筋が伸びる思いがしました。

れんの父親や兄が、彼女をどう扱っているか。当時の男尊女卑の価値観が随所に描かれていますが、安はそれに飲み込まれない。

自分の意志を曲げずに、ただまっすぐにれんと向き合い続けます。

「こういう人が、本当に強いんだ」と感じさせてくれる人物です。

自分の限界を決めてしまいそうなとき、誰かの目線が気になって動けなくなっているとき——安の姿は、静かに、でも確かに背中を押してくれると思います。

言葉が届く瞬間の、あの感動

目が見えず耳も聞こえない人に、どうやって言葉を教えるのか。読み始めた時、私も「無理なんじゃないか」と思いました。

ですが、安はあきらめずに奮闘し続けます。

れんが徐々に成長していく描写を読んでいると、目の奥が熱くなってます。

あの感動はありきたりな言葉では表せないのですが、強いて言うなら「やる前から限界を決めていた自分が、恥ずかしくなる」感覚です。

物語の途中、れんがふと見せるかわいらしい笑顔のシーンがあります。厳しい日々のなかで安がどれだけそれに救われていたか、読んでいてじわりと伝わってきました。

言葉を持つことの意味、意思疎通できることのありがたさを、日常では忘れがちです。

この本を読むと、それをもう一度、ちゃんと感じることができます。

壁にぶつかっているとき、何かに挑戦しようとしているとき——そういうタイミングで読むと、特に刺さると思います。

史実と物語の重なりかたが、マハさんらしい

読み終えてから調べてみると、この物語がある実在の人物たちをモデルにしていることがわかりました。

知った瞬間、「あ、だからこのストーリーだったのか」と全部が繋がりました。

原田マハさんは、史実をベースにしながら、そこに完全なオリジナルの人物と感情を重ねていく書き方にとても長けていると思います。

『たゆたえども沈まず』や『暗幕のゲルニカ』でも感じたことですが、『奇跡の人』でも同じように感じました。

「昔本当にこんなことがあったかもしれない」と思わせてくれる原田マハさんのこの描き方が、個人的にとても好きです。

原田マハさんの他の作品をすでに読んでいる方なら、この本も絶対に好きになれると思います。

まだ読んだことがない方にとっては、ここからマハさんの世界に入るのも、いい選択肢だと思います。

まとめ

『奇跡の人』は、信念を貫く強い女性の物語です。

明治時代の青森を舞台に、周囲の誰もが無理だと思うことに立ち向かい続ける安の姿は、読んでいる間ずっと心に火を灯してくれます。

読み終えたあと、じわりと込み上げてくるものがありました。

ストーリーへの感動はもちろん、言葉を持つことで、れんの世界がどれだけ広がったか。
言葉があるから、人と心が通じ合える。

そのあたりまえのことを、この本は静かに、でも確かに気づかせてくれます。

高い壁にぶつかっているとき、何かを諦めそうになっているとき——そういうときにぜひ読んでほしい一冊です。

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