今回ご紹介するのは、原田マハさんの『風のマジム』です。
学生の頃に一度読んだのですが内容をほとんど覚えておらず、久しぶりに再読しました。
30歳という今の年齢で読んだからこそ刺さるものがあり、特に同世代の女性に読んでほしい一冊です。
この記事では、そんな『風のマジム』の魅力を3つの軸でお届けします。
- 地図を見るまで知らなかった、南大東島という場所の魅力
- ラム酒と蒸留の世界が、思いがけず面白かった話
- 同世代の女性の挑戦から、静かな元気をもらえること
地図を広げたら、知らない島があった
読み始めてすぐスマホで地図を開いて、物語の舞台である「南大東島」を検索しました。
沖縄本島からさらに東へ約360km。こんな場所に島があるとは、まったく知りませんでした。

周囲を切り立った絶壁に囲まれた、ほぼ円形の小さな島で、港がなく、船で渡るにも一苦労という、なんとも「秘境感」のある場所です。
でも物語を読んでいると、その絶壁の上をさとうきびの緑が揺れ、潮風がさとうきび畑を駆け抜けていく景色が目に浮かんできます。
原田マハさんの描写には、いつも「その場所に連れていってくれる力」があると思うのですが、この作品もそうです。
東京のオフィスで画面を毎日PCの画面を見ている自分が、まるで島の高台に立って青い空を見上げているような気持ちになれる。
行ったことのない場所なのに、主人公・まじむと一緒に南大東島を歩いているような感覚になれます。
読み終えたあと、「実際に行ってみたい」という気持ちが自然と湧いてきました。
地図で見ると、東京からのアクセスはなかなか大変そうですが、だからこそ「いつかの旅先リスト」に入れておきたい場所になりました。
ラム酒と蒸留の話が、こんなに面白いとは思わなかった

正直に言うと、私はラムをほとんど飲んだことがありません。
でもこの物語を読んで、ラムが飲みたくなりました。
それも、ちゃんとしたグラスに注いで、少しずつ香りを確かめながら飲みたい。
「風の酒」と呼ばれるラムの、その理由を自分の舌で確かめたい。
そういう気持ちになりました。
蒸留という「一手間」のロマン
作中では、ラム酒の製造工程が丁寧に描かれています。
さとうきびから糖蜜を取り出し、発酵させ、蒸留する、という一連の流れ。
蒸留というのは、発酵させたものを加熱して蒸気を取り出し、冷やして液体に戻すという工程です。
その「一手間」によって、香りと風味がぐっと凝縮されるとのこと。
そしてこの蒸留という技術、大昔から世界中で行われてきたものです。
何百年も受け継がれてきた知恵が、今もラム酒という形で生きている。
そう知ると、グラスの中の一杯がなんだかとても豊かなものに感じられてきます。
おいしいものを作ることへの、長い長い情熱の積み重ね。
そのロマンに、読みながらじわじわと引き込まれていきました。
この本を読んでから、おいしいお酒に出会ったとき、「これはどうやって作られているんだろう」と考えてみるようになりました。
それだけで、お酒の味わいがちょっと変わる気がしています。
「派遣か正社員か」なんて関係ない|まじむという女性の挑戦

この物語がとくに好きなのは、主人公・まじむの存在です。
アラサーの女性が、南大東島で理想のラム酒を作るためにゼロから事業を立ち上げていく。
そのサクセスストーリーに、私は素直に元気をもらいました。
「このままでいいのかな」とか「自分には何もできないんじゃないか」とか、そういうモヤモヤを抱えているとき、まじむの姿は静かに背中を押してくれます。
物語の中では、派遣社員か正社員かという肩書きはまったく関係ありません。
まじむは自分の信念と情熱を軸に、ひたすら前を向いて進んでいく。
その姿がまぶしくて、リアルで、心に刺さります。
実在モデルの女性がいるという事実
実はこの物語、実在のモデルがいます。
南大東島に本社を置くラム酒製造会社「グレイスラム」を立ち上げた金城さんという女性です。
もちろん物語はフィクションですが、「こういうゼロイチが実際にあったんだ!」と知ったとき、衝撃でした。
↓グレイスラムのホームページはこちらです。

きっと相当な熱量と、想像を超える苦労があったはずです。
でもその先に、自分が作りたいラム酒が生まれた。
そう思うと、グレイスラムのボトルを手に取りたくなります。
物語を読んだあとに飲むラムは、きっとまた違う味がするはずです。
おばあの言葉と、愛情を持って叱ってくれる人への感謝

この物語には、まじむの周囲に温かい人たちが集まっています。
フィクションならではの「みんないい人」感はありますが、その中でも特に心に残ったのが、おばあの存在でした。
おばあは、まじむに対して優しいだけではありません。
厳しく、時には容赦ない言葉をかけてくる。でもその言葉の根っこに、深い愛情がある。
「愛情を持って叱ってくれる人が、すぐそばにいる」
これって、本当に贅沢なことだと思います。
叱ってくれるということは、その人の将来を本気で考えているということ。
大人になるほど、そういう人は少なくなっていくと思っています。
そして、プレゼン前日の夜のシーン。
おばあが仏壇の前で企画書を抱えながら、ずっと祈り続けている姿には、読んでいて涙が滲みました。
自分にとって、そういう存在は誰だろう。そんなことを、静かに考えさせてくれる場面でした。
まとめ

『風のマジム』は、南大東島という知らなかった場所に連れていってくれて、ラム酒という知らなかった世界を教えてくれて、同世代の女性の挑戦に静かな勇気をもらえる。
そんな一冊でした。
読み終えたあと、「旅に出たいな」という気持ちと、「もう少し頑張ってみようかな」という気持ちが、同時に湧いてきました。
そういう余韻を残してくれる本って、なかなかありません。
「このままでいいのかな」と感じるとき、ぜひ手に取ってみてください。
南大東島の潮風が、あなたのところまで届くはずです。

