美術知識ゼロでも楽しめる|原田マハ『リボルバー』ネタバレなしレビュー

読書

週末はたびたび美術展へ行って過ごしています。

印象派の絵の前でぼんやりと立ち尽くし、帰り道にコンビニのホットコーヒーを飲みながら「ゴッホって、どんな人だったんだろう」と思う。

でも、その疑問は電車の振動とともにどこかへ消えてしまって、夜はいつものルーティンに戻っていく——そんな「気になるけど、止まれない毎日」を送っていた私が、久しぶりに夜中まで読み続けてしまった一冊と出会いました。

原田マハさんの『リボルバー』です。

ゴッホとゴーギャンの謎を巡るアートミステリーですが、難解な美術書とはまったく異なります。

「絵は好きだけど、どこまで知ればいいかわからない」という方こそ、すんなりと入れる小説です。

この記事では、ネタバレなしで以下のことをお伝えします。

  • 美術史の知識がなくても最後まで楽しめる理由
  • ゴーギャンという、意外と知られていない天才画家の一面
  • 読み終えたあとに「ふたりは幸せだったのではないか」と自然に思えるようになる理由

すでに気になっている方は、まずこちらから確認してみてください。

『リボルバー』基本情報とあらすじ

著者:原田マハ
出版社:幻冬舎
発売年:2021年
ページ数:約330ページ

物語の主人公は、パリのオークション会社に勤める日本人女性・冴(さえ)。

ある日、彼女のもとに一丁のリボルバー(回転式拳銃)が持ち込まれます。「これはゴッホを撃った銃だ」という証言とともに。

銃の真偽を確かめるため、冴は周囲の協力を得ながら調査を進めていきます。

現代のパリを舞台にした謎解きのパートや、19世紀のゴッホとゴーギャンの日々を描くパートなどが描かれる構成で、史実とフィクションが巧みに絡み合っています。

「アート小説は難しそう」と感じている方も、心配無用です。

その理由は、次のセクションで詳しくお話しします。

読んで気づいたこと|私が心を動かされたポイント

ゴーギャンという画家の「もうひとつの顔」に引き込まれた

この本を読む前、私はゴーギャンのことをほとんど知りませんでした。

タヒチの女性たちを描いた絵は見たことがある。

でも、なぜタヒチへ渡ったのか、ゴッホとどんな関係だったのか。正直、深く考えたことすらなかったのです。

『リボルバー』は、ゴッホと同じくらいの比重でゴーギャンにスポットを当てています。

タヒチに何を求めていたのか。アルルでのふたりの共同生活がどんなものだったのか。

読み進めるうちに、「もっとゴーギャンの絵を見たい、知りたい」という気持ちが自然と湧き上がってきました。

読み終えた後、「ゴーギャン 絵画」と検索していました。

自分から調べたくなる読書体験は、それだけでひとつの豊かさだと思います。

美術史の「外側」にいるキャラクターが、読者の道しるべになる

物語には、冴の同僚であるギローとジャン=フィリップという人物が登場します。

オークションへの情熱をむき出しにするギローと、冷静でやや頑固なオタク気質のジャン=フィリップ。

このふたりが美術史家ではない目線を持ち込んでくれるおかげで、美術の知識が乏しい私も、しっかりと物語についていくことができました。

ちょっと堅そうな言葉や歴史的な背景が出てきても、彼らの疑問や反応が「ガイド役」を担ってくれます。

謎が少しずつ紐解かれていくにつれて、「次はどうなるんだろう」という感覚がずっと続いて、ページをめくる手が止まりませんでした。

「感情を除いて、事実だけを見る」でも冴には、信念がある

美術史家という職業を、私はこの本で初めてきちんと知りました。

仮説を立て、史料を調べ、感情を挟まずに事実だけを積み上げていく——そういった研究のスタンスが、作中で丁寧に描かれています。

「感情を除いて研究を進める」というのは、私には正直、難しいことだと感じました。

でも主人公の冴は、そのルールを守りながらも、「ゴッホとゴーギャンは、不幸のうちに人生を終えたのではないと信じたい」という揺るぎない想いを内側に持ち続けています。

その信念が、読んでいる私の心にもじわりと染み込んできました。

読み終えるころには、「つらいことは多かっただろうけれど、大好きな絵ととことん向き合い続けたふたりは、なんだかんだ幸せな人生を送ったのではないかな」と、自然にそう思えていました。

史実とフィクションの境界線を巧みに使いながら「本当にあったことかもしれない」と思わせてしまう原田マハさんの筆の力を、この一冊でまた確かめることができました。

気になった方は、ぜひこちらから手に取ってみてください。

こんな方におすすめ

  • 美術展(とくに印象派)が好きで、もっと深く知りたいと感じている方
  • ゴッホは知っているけれど、ゴーギャンについてはあまり詳しくない方
  • 難しい美術書は苦手だけど、物語を通してアートに触れたいと思っている方
  • 謎解き要素のある小説が好きで、「止まらない読書体験」がしたい方
  • 仕事のルーティンに慣れ、毎日に少し豊かさや刺激を足したいと感じている方
  • ひとりの週末を、読書で静かに充実させたい方

「最近、読んで本当に良かったと思える本があったかな」と思い浮かばない方は、ぜひこの機会に手に取ってみてください。

気になった瞬間が、いちばんいいタイミングです。

まとめ|絵の前に立つ時間が、少しだけ変わるかもしれない

原田マハさんの『リボルバー』は、ミステリーという形をとりながら、ゴッホとゴーギャンというふたりの画家の人生に真摯に向き合った小説です。

謎解きの面白さはもちろん、「絵を描くことに人生を懸けた人たちの生き様」を、美しいフィクションを通して感じることができます。

難しい美術知識がなくても最後まで楽しめますし、読み終えた後に美術館でゴッホやゴーギャンの絵の前に立ったとき、きっと以前とは少し違う目線で向き合えるはずです。

それだけで、この本に出会えた価値は十分にあると私は思っています。

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