読書が続かないアラサー女性に読んでほしい一冊。原田マハ『常設展示室』レビュー

読書

最近、読書をしようと思っても、本を手に取るのが億劫になってしまったり、なかなか最後まで読み切れなかったりすることはありませんか?

私もそんな一人でした。

でもこの本を読んで、読書への向き合い方が少し変わった気がします。

今回紹介するのは、原田マハさんの短編集『常設展示室』。

アートと人間の出会い、そして別れと再会を6つの物語で描いた作品です。

この記事はこんな人におすすめです。

  • 読書習慣をつけたいけど、読み切る自信がない
  • 仕事や人間関係に閉塞感を感じていて、何か刺激が欲しい
  • 美術館に興味はあるが、絵の「正しい見方」がわからなくて気後れしてしまう
  • 自分らしく生きている女性の物語に共感したい

ネタバレなしでお伝えするので、まだ読んでいない方もぜひ読んでみてください。


1話15分。読書が続かない人にこそ手に取ってほしい短編集

『常設展示室』は、全6話からなる短編集です。

1話あたり15分程度で読み終わるので、「読書をしたいけど時間がない」「集中力が続かない」という人にとって、理想的な構成になっています。

通勤電車の中で1話、お昼休みに1話、という読み方ができるのが短編集のいいところ。

私自身、最近は長編を最後まで読み切るのが億劫になっていて、読みかけの本が積み上がっていたのですが、この本は気がついたら全部読み終わっていました。

テーマは「アートと人の出会い、別れ、そして再会」

世界各地の名だたる美術館を舞台に、それぞれ違う主人公が、一枚の絵との出会いを通して人生の転機を迎えていきます。

ドラマチックなのに押しつけがましくない、そのバランスが心地よい作品です。

読書が最近億劫になっているなと感じたら、まずこの本を手に取ってみるだけでいいと思います。

「群青」——純粋な眼差しで絵と向き合うことを思い出させてくれた話

「群青」は、6つの物語のなかで、最も心に残った物語のひとつです。

主人公は、ニューヨークのメトロポリタン美術館という世界的な美術館で働いています。

アートを愛し、その道に全力を注いできた女性。経歴はまさに理想的なのですが、一方で給与は決して高くなく、質素なアパートメントに住んでいます。

その経歴と日常のギャップが、彼女のアートへの純粋な情熱を際立たせていて、読んでいて素直に「かっこいいな」と思いました。

ネタバレになるので詳しくは書けないのですが、この物語には「子どもがピカソの絵と向き合う場面」が登場します。

何の先入観もなく、ただ目の前の絵に純粋に反応する姿が、とても鮮やかで印象的でした。

私は美術館に行くとき、どうしても「この絵は何を意味しているのか」「ちゃんと理解できているか」と考えすぎてしまいます。

でもこの場面を読んで、絵との出会いに「正解」なんてないんだとあらためて気づかされました。

素直な感情でいい。観てみてどう感じるか、それだけでいい。
そう思ったら、美術館がもう少し身近に感じられるようになりました。

「豪奢」——本当の贅沢とは何かを、一枚の絵が教えてくれる

「豪奢」は、6話のなかで一番「刺さった」作品かもしれません。

主人公の女性は、憧れていたアートの仕事を手放し、莫大な資産を持つ男性との関係に身を置くことを選びます。

高価なブランドの服やアクセサリーに囲まれた暮らし。でも、ガラスに映る自分の姿が、どこか別人のように見える。

その違和感の描写が、妙にリアルで胸に刺さりました。

おそらく多くの人が、多かれ少なかれ似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

周りから見て「いい暮らし」をしているように見えても、自分の軸からずれていると、どこか空洞なような感覚。

この物語のラストは、ある一枚の絵との出会いが彼女を変えていきます。

その絵から「贅沢とは何か」という問いに対する答えを彼女自身が気づいていくシーンが、読んでいて気持ちよかった。

また、色の描写がとても美しくて。原田マハさんの文章は、絵を観るように読めるという感覚があります。

どんな色の絵なのかを実際に観てみたくなるような表現で、読み終わったあと、自然と「美術館に行きたい」と思っていました。

「自分らしさ」を少し忘れていると感じている人に、ぜひ読んでみてほしい一話です。

「道」——「名作」の定義を、静かに塗り替えてくれる物語

「道」は、読後の余韻が一番長く続いた作品です。

この物語の主人公は、アート界でバリバリと活躍する女性。

仕事ができて、信念を持ち、自分の美意識に忠実に生きている。
読んでいてかっこいいと思ったし、ちょっと憧れる存在でもありました。

物語の核心はネタバレになるので書きませんが、「絵と人との再会」が軸になっています。

有名な画家の作品でなくても、誰かの心に深く残る絵はある。
何が「名作」かは、観る人によって違う。

そのことを、この話はそっと教えてくれます。

作中に出てくる主人公の考え方が、私はとても好きでした。

ほんとうの感動は作品を観終わった後についてくる。――観た人の一日を豊かにし続ける。それが名作というものだ。

本文より引用

この考え方に、深く共感しました。

美術館での体験というのは、その場で完結するものじゃないんですよね。

帰り道や、翌日の朝にふと思い出したりする。そういう余韻こそが、アートの醍醐味なんだとあらためて思いました。

私もそんな風に思える「名作」に出会いたい。そう思わされました。


まとめ

『常設展示室』は、アート小説でありながら、30代の働く女性たちが抱えるリアルな感情にもきちんと触れてくる作品だと思います。

  • 1話15分で読めるから、読書が続かなくても大丈夫
  • 「純粋な目で絵を観ることの大切さ」を「群青」が教えてくれる
  • 「本当の豊かさとは何か」を「豪奢」が静かに問いかけてくる
  • 「名作の定義」を「道」がやさしく塗り替えてくれる

読み終わったあとに自然と「美術館に行きたい」と思えるのが、この本の一番の魔法だと思っています。

週末の予定が減って、一人の時間が増えたと感じているなら、この本と美術館のセットがおすすめです。

読書という小さな入口から、週末の質がすこしだけ変わるかもしれません。

まずは通勤の電車の中で、スマホの代わりに読み始めてみてください。

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