※本記事にはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。
原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』を読み終えた翌日、国立西洋美術館へ行ってきました。
松方幸次郎という人物と、彼が守ろうとした絵画たちの物語を読んだばかり。前日の夜にチケットを取って、上野へ向かいました。
特別展にはこれまで何度も足を運んできたのに、常設展に入るのは今回がはじめてでした。企画展の名前は知っていても、常設展は素通りしている。そんな方も多いかもしれません。
この記事では、実際に足が止まった4点の絵と、常設展の歩き方をまとめます。
国立西洋美術館の常設展は、500円で観られます

常設展の観覧料は、一般500円です。大学生は250円、高校生以下・18歳未満・65歳以上・障害者の方は無料で観られます。
開館時間は9:30〜17:30。金曜と土曜は9:30〜20:00まで開いています。入室は閉室の30分前までなので、少し余裕を持って向かうと安心です。
休館日は毎週月曜日(祝日の場合は開館)と年末年始です。
チケットはオンラインで事前に購入できます。わたしは前日の夜にネットで買いましたが、日時指定ではなかったので、当日ゆっくり向かえました。当日、窓口でも購入できます。
毎月第2日曜日の「Kawasaki Free Sunday」は無料観覧日になっています。国際博物館の日(5月18日)と文化の日(11月3日)も無料です。
ひとつ、お知らせしておきたいことがあります。国立西洋美術館では、観覧料金の改定が決まりました。
2027年3月20日以降に始まる展示会期から、常設展は一般1,000円・大学生500円になります。
高校生以下・18歳未満・65歳以上・障害者の方が無料という点は、これまでどおりです。
本館はル・コルビュジエの設計で、2016年に世界文化遺産に登録されました。建物そのものも、常設展の見どころのひとつです。
この情報は2026年9月時点のものです。行く前には公式サイトで最新の情報を確認してみてください。
足が止まった4点は、すべて松方コレクションでした
広い常設展のなかで、とくに足が止まった作品が4点あります。
この4点はすべて松方幸次郎さんが集めた松方コレクションのものです。
ルノワール《帽子の女》

ルノワールの《帽子の女》は、色の鮮やかさと、ふわっとした淡い色合いの筆のタッチに目を奪われました。
帽子とドレスは白なのに、よく見ると黄色や青、ピンクが混ざっていて、色の表現がとても面白いんです。
画面全体がフェルト生地のように毛羽立って見えて、不思議な感覚でした。
カラフルな背景の中で女性だけが白いぶん、かえって目立って見えます。ゆったり座るこの女性の品の良さも、静かに伝わってきました。
《帽子の女》は1891年に描かれた作品で、1921年に松方幸次郎がデュラン=リュエル画廊から購入しました。
一度フランス政府に接収されましたが、1959年に日本へ寄贈返還されています。
ルノワール《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》

この絵は『美しき愚かものたちのタブロー』にも登場していたので、見つけた瞬間「あ、本に出てきた絵だ」とうれしくなりました。
アラブ風のじゅうたんやアクセサリーがエキゾチックな雰囲気で、真ん中の女性は光が当たっているかのように明るく描かれていて目を引きます。
本を読んでいなければ、きっとさらっと観て終わっていた一枚です。
1872年に描かれたこの作品は、ルノワール初期の代表作とされています。
ドラクロワの《アルジェの女たち》に着想を得た絵で、アトリエでは「ハーレム」と呼ばれていたそうです。
モネ《睡蓮》

モネの《睡蓮》は、やっぱり圧倒的な存在感がありました。
大きなカンヴァスいっぱいに優しい色彩の池が広がっていて、観ているだけで心が穏やかになります。
近くで見るよりも少し離れて見るほうが、睡蓮の奥行きを感じられました。カエルやアメンボが水面にいるような気さえしたほどです。
「松方幸次郎がこれを買ったのか」と、この絵の前でいちばん強く思いを馳せました。
1916年に描かれたこの作品は、1921年に松方が画家本人から直接購入したものです。
モネ《睡蓮、柳の反映》

本の内容にいちばん関連する絵だと感じたのは、この一枚でした。
松方がモネ本人から購入した作品ですが、フランスで発見されたときには大きく損傷していて、展示されている今もカンヴァスの上半分が失われた状態です。
その状態を目の前にして、小説で描かれていたタブローを取り巻く環境に思いを馳せました。
絵を安全に運ぶ手段もないような時代に、誰かが必死にこの絵を守っていたのかもしれない、と。
実際にこの絵を観られたことに、胸が熱くなりました。
この作品は、ルーヴル美術館の収蔵庫で見つかったのち、2017年に松方家へ返還され、国立西洋美術館へ寄贈されました。
本を読んでから行くと、絵の見え方が変わりました

《アルジェリア風のパリの女たち》を見つけたときの「あ、これだ」という感覚は、本を読んでいなければ味わえなかったものです。
物語のなかで名前だけ知っていた絵が、目の前に実在する。その一致がうれしくて、しばらく絵の前から動けませんでした。
《睡蓮》の前では、松方幸次郎とモネのつながりを思いました。
実業家だった松方が、画家本人のもとへ足を運び、この絵を買い付けたという事実が、絵の存在をより重く感じさせてくれます。
500円で、いつでもこの絵を観られるありがたさを、しみじみと感じました。
それは松方さんが当時、熱い思いでコレクションを集めていたからこそのものです。
わたしもその恩恵を享受できているのだと思うと、あらためて感謝したくなりました。
松方幸次郎がどんな人だったのかは、この本を読んだときの記事にまとめています。
常設展へ行く前に読んでおくと、絵の前で思い出せることが増えるので、おすすめです。
常設展の歩き方|はじめてなら、目星をつけてから

今回は14時頃から2時間半ほど滞在しました。それでも思ったより展示が多く、敷地も広くて、すべては見切れませんでした。
常設展の順路は、入ってすぐが宗教画などの古い時代の作品で、そこから印象派、そして現代へと進んでいきます。
最初からすべてをじっくり観ていると、後半に着く頃にはかなり足が疲れてしまいます。
わたしは宗教画を少しだけ観たあと、印象派から現代へと進みました。途中、ベンチで休みながら回るのがちょうどよかったです。
どの絵を観たいか目星をつけてから入るのがおすすめです。
音声ガイドは用意されていませんでした。写真撮影は、禁止マークがなければ基本的にOKです。制作年が新しい作品ほど、撮影禁止になっている印象でした。
わたしが訪れた9月は、新館2階で特集展示「クロード・モネ没後100周年」(2026年7月22日〜9月23日)が開かれていました。《睡蓮》を観たのも、その会場です。
常設展では、時期ごとにこうした特集展示が組まれています。
企画展は常設展とは別料金なので、どちらを観るか行く前に決めておくと動きやすいです。
こんな人におすすめです
モネや印象派の絵が好きな方には、この常設展をぜひ歩いてみてほしいと思います。
企画展だけでなく、これほどの作品が常設で観られることに、あらためて驚きました。
美術館に行ってみたいけれど少し勇気がいる、という方へ書いた記事もあります。
帰り道に、常設展ものぞいてみませんか

企画展を目当てに国立西洋美術館へ行く方も多いと思います。
その帰りに少しだけ時間を足して常設展を歩くと、思いがけない一枚に出会えるかもしれません。



