原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』あらすじと感想|国立西洋美術館が生まれるまで

美しき愚かものたちのタブロー表紙 アートに出会う本

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原田マハさんの作品は好きでよく手に取るのですが、まだ読んだことのない一冊がずっと気になっていました。

それが『美しき愚かものたちのタブロー』です。表紙に描かれたゴッホ《アルルの寝室》のインパクトに惹かれて、ようやくページを開きました。

『美しき愚かものたちのタブロー』はどんな本?

ゴッホ「アルルの寝室」

著者は原田マハさん。

松方コレクションの成り立ちと、いまの国立西洋美術館が生まれるまでを、史実をもとに描いた物語です。

松方幸次郎という実業家が、私財を投じて集めた西洋美術のコレクション。タイトルにある「タブロー」とは、絵画のことです。

そこに人生を懸けた人たちの物語が、静かな熱を帯びて描かれています。

実在した人物や出来事をもとにしながら、そこに息づく感情まで丁寧に描かれているところに、この作者らしさを感じました。

心に残ったのは、松方幸次郎の「好奇心」でした

読書中の女性と本

「面白いじゃないか」と心躍らせる生き方

読んでいちばん刺激を受けたのは、松方幸次郎という人の好奇心でした。

やったことがないことはやってみたいし、行ったことがない場所には行ってみたい。

新しい体験をどんどん吸収して、日々学んでいきます。新しいことに出会うたび「面白いじゃないか」と少年のように心を躍らせて、それを恥じることがありません。

こういう生き方は、素直にかっこいいなと思いました。

松方はこの物語の中で、忘れられない言葉を残していました。この一文が、いちばん心に残っています。

一瞬一瞬が一生に一度しかない瞬間なのだ。この一瞬をおもしろく生きずして、おもしろい人生にはできぬ。

(原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』(文春文庫)p.212)

自分もこんなふうに一瞬を面白がりながら、生きていきたいと強く思いました。

田代が「この人にどこまでもついていこう」と決めた気持ち

松方に仕える田代は、物語の中でそう心に決めます。読みながら、その気持ちがすごくよく分かる、と何度もうなずいていました。

松方は、常に新しいことを追い求める人です。その好奇心が周りの人たちを引きつけ、大きな物事を動かす力になっているのだと思います。

誰かにここまで信頼してもらえる人でありたいし、誰かをここまで信頼できる自分でもありたい。

そんなことを、ふと考えさせられました。

命がけでタブローを守った人がいた

読書中に開かれている本

後半に描かれる、日置の過去の回想シーン。ここは特に、結末が気になってページをめくる手が止まりませんでした。

命を懸けてタブローを守ろうとする、その生き様が心に残っています。

「この人のために力を貸したい」と思わせる松方は、やっぱりすごい人なのだと思います。

松方自身の生き方が、そういう人たちを引き寄せていたのでしょう。

文化の力に立脚した考え方が、好きだと思いました

この物語は史実をもとに描かれていますが、日本の青年たちに西洋美術を直接観られる場所をつくりたいという、松方の強い想いがそこにはありました。

その想いが、いまの国立西洋美術館につながっていると知って、胸が震えました。

文化への理解や教養を育てていかなければ、先進国に後れを取ってしまうのではないか。物語の底に流れるそんな考え方が、わたしはとても好きでした。

わたし自身も、文化に対する教養をこれからもっと深めていきたいと、素直に思っています。

美術館というと、なんとなく敷居が高い場所だと感じていたのですが、その成り立ちを知ると、少し違って見えてきます。

同じ著者の作品で、絵を守ろうとする人たちを描いた物語を、以前読んだことがあります。そのときの感想は『暗幕のゲルニカ』のレビューにまとめました。

読んだあとに起きた、小さな変化

国立西洋美術館

読み終えてすぐ、居ても立ってもいられなくなって、国立西洋美術館の常設展のチケットを予約しました。

特別展にはこれまで何度も足を運んだことがあります。けれど常設展に行くのは、今回が初めてです。これから訪れるのが、いまから楽しみです。

その翌日、実際に常設展を歩いてきました。松方が集めた絵の前で何を思ったかは、こちらにまとめています。

美術館にひとりで出かけることについては、こちらの記事にも書いています。

こんな人におすすめ

国立西洋美術館のロダン「考える人」

アートや美術館が好きな人には、まっすぐおすすめしたい一冊です。

国立西洋美術館に行ったことがある人なら、あの場所が立ち上がるまでの物語として読めます。

何かひとつのことに熱い情熱を注いで生きている人生に触れたい人にも、きっと響くと思います。

週末、静かに一人の時間を過ごしながら、じっくりページを進めたい一冊でもあります。仕事から離れて誰かの熱量に触れる時間は、思っている以上に自分を励ましてくれます。

むすび|一瞬をおもしろく生きる

本棚から本を取ろうとしているところ

一瞬一瞬をおもしろく生きる。松方の言葉を胸に、わたしもまずは小さな一歩から始めてみようと思います。たとえば、予約した常設展に足を運ぶこと。

読み終えた本が、次に行く場所を教えてくれる。そんな読書の楽しみ方も、悪くないなと感じています。

気になった方は、こちらからどうぞ。

原田マハさんの作品をもっと知りたくなった方は、タイプ別に紹介しているガイド記事もあります。

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