『陰日向に咲く』感想|積読だった劇団ひとりの小説が、想像よりずっとあたたかかった

生き方に効く本

積んだままの一冊、ありませんか

昔、テレビや書店でよく話題になっていたのに、気になったまま本棚で眠っている本ってありませんか?

わたしにとってその一冊が、劇団ひとりさんの『陰日向に咲く』でした。

芸人さんが書いた小説を読んだことがなかったので、正直少し身構えながらページを開きました。今回は、長らく積読だったこの本をようやく読み終えたので、心に残った場面や、読んだあとに感じた小さな変化を書いてみようと思います。

どんな本?

『陰日向に咲く』は、劇団ひとりさんのデビュー小説です。連作短編の形式で、それぞれの物語の登場人物たちが、少しずつすれ違ったり重なったりしながらつながっていきます。一話ごとに主人公が変わるので、まったく違う人生をのぞき見ているような気持ちで読み進められました。

短編なので一話一話が短く、気負わずに読めるのも印象的でした。

心に残ったポイント3つ

「道草」|自由って、人によって形がちがう

最初に収録されている「道草」は、ホームレスに憧れて、自ら進んでホームレスになる会社員の話です。設定だけ聞くとかなり突飛なのですが、読んでいるうちに「ホームレスが自由な感じがした」という気持ちに、ふと納得してしまう自分がいました。

自由って、人それぞれで解釈がちがうものだし、誰もが心のどこかで求めているものなんだなと思ったんです。そして、本当の自由を手に入れるためには、何かを手放さなきゃいけないこともあるんだと思います。ホームレスになるのはさすがに極端だけれど、その部分だけは、たしかにそうだよなあと素直にうなずいてしまいました。

「Overrun」|いけないことのはずなのに、あたたかい

「Overrun」は、借金まみれのギャンブラーが、おばあちゃんに詐欺を働こうとする話です。オレオレ詐欺の電話をかけて息子の「健一」になりすますのですが、いざとなるとお金を騙し取ることに気が引けてしまい、結局はただの近況報告のような会話になっていきます。

やっていることは褒められたことではないはずなのに、その場面にはどこかあたたかい空気が流れていて、わたしはそこにいちばん惹きつけられました。結末はここには書きませんが、最後は素直に涙が出ました。ぜひ実際に読んで、あの読後感を味わってほしいなと思います。

巻末の解説|「人生、何が幸いするかわかりません」

巻末には解説が収録されているのですが、これを書いているのが劇団ひとりさんの実のお父さんだと知って驚きました。あたたかく、愛にあふれた文章で、息子を応援し、その幸せを願う父親としての素直な言葉が並んでいます。

その中で何度か登場するのが、「人生、何が幸いするかわかりません」という言葉です(『陰日向に咲く』文庫版解説より)。

シンプルな一文なのですが、つらい時期やどん底にいるときでも、くじけずに生きていきたいと思わせてくれました。本編を読み終えたあとに、この解説でもう一度あたたかい気持ちにさせてもらえるのは、うれしい構成だなと思います。

読んだあとの小さな変化

読み終えてから、何があっても自分の思ったように、人の目を気にしすぎずに生きることを、もう少し頑張ってみようかなと思うようになりました。

登場人物たちは、それぞれまったく違う人生を生きていて、その中には決して褒められたものではない選択をする人もいます。それでも、その一人ひとりに、その人なりの理由や感情があるんですよね。そう思うと、いろんな人生の中の一人がわたしなんだから、やりたいように生きていけばいいんだよなと、肩の力が少し抜けた気がしました。

こんな人におすすめ

短編集なので、スキマ時間にも読みやすい一冊です。仕事終わりに少しだけとか、週末に家でゆっくりとか、忙しくてまとまった時間が取りづらい人にもおすすめできます。

そして、つらい時期やどん底にいるときにこそ、そっと読んでほしい本だとも思います。「人生、何が幸いするかわかりません」という言葉に、わたしはずいぶん励まされました。

むすび

気になったまま積んでいた一冊が、想像よりもずっとあたたかい読後感を残してくれました。

もし本棚の隅で眠っている本があれば、この週末にでも、少しだけ手に取ってみませんか。

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