『カフーを待ちわびて』感想|絵馬の一行から始まる、沖縄のやさしい物語

カフーを待ちわびて 生き方に効く本

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週末、本棚の前に立って「読みたい本がないわけじゃないのに、なんとなく手が伸びない」ということが、わたしにはよくあります。

今回手に取ったのは、原田マハさんの『カフーを待ちわびて』。

きっかけは、映画化されていたことをどこかで聞いたことがあったから、というだけの軽い入り口でした。積読の中でしばらく眠っていた一冊を、ようやく開いてみた話です。

『カフーを待ちわびて』はどんな本?|原田マハのデビュー作

本棚から本を取ろうとしているところ

原田マハさんの小説家としてのデビュー作で、第1回日本ラブストーリー大賞の大賞を受賞した作品です。

2009年には映画にもなっていて、タイトルだけは知っていたという方も多いのではないかと思います。わたしもまさにそのひとりでした。

あらすじ|絵馬に書いた一行から始まる物語

舞台は、沖縄のとある離島。主人公は明青(あきお)という青年で、ある日、神社の絵馬に何気なくひとことを書き添えます。

それだけの、ささやかな行為でした。ところがしばらくして、幸(さち)と名乗る女性が、その絵馬を頼りに彼のもとを訪ねてくるところから、物語は動き出します。

派手な事件が起きるわけではないのに、次のページをめくる手が止まらなくなる。そんな引力を持った書き出しでした。

ここから先の展開は、ぜひ本を開いて確かめてほしいので、この記事では書きません。

次に何が起こるのか気になって、気づけば数十ページをまとめて読み進めていました。

「カフー」ってどういう意味?

タイトルにもなっている「カフー」は、沖縄の言葉で「果報」を指します。幸せ、良い報せという意味合いを持つ言葉です。

物語の中でこの言葉が印象的な場面で使われていて、タイトルの意味を知ってから読むと、明青という青年が待ちわびているものの正体が、じんわりと伝わってくる気がしました。

意味を知らずに読み始めても十分に楽しめますが、知ってから読むと、登場人物たちの言葉の端々に、この言葉の余韻が重なって聞こえてきます。

「果報」という言葉自体、日常ではあまり使わないぶん、タイトルに使われているだけで、少し特別な響きに感じられました。

心に残った3つのこと

絵馬から始まる奇跡の出会い

本を読んでいる手元

絵馬に書いたひとことから物語が動き出すという入り口に、まず心をつかまれました。神社にお参りして絵馬を書くという、誰もがやったことのあるような小さな行為が、思いがけない出会いにつながってしまう。

そんな発想に、原田マハさんという作家の力を感じました。

わたし自身、神社で絵馬を書いたことは何度もありますが、そこに書いた言葉が誰かに読まれて、実際の出会いにつながるとは考えたこともありませんでした。

幸が海で犬と遊ぶ場面と、おばあの夜ごはん

わたしが一番好きだったのは、幸が海辺で犬と戯れて遊ぶ場面です。

潮の匂いや空の色まで思い浮かぶような描写で、読んでいるだけで心がほどけていきました。

それから、おばあが作る夜ご飯の描写もとてもおいしそうで、何度もお腹が空きました。

こういう場面を読んでいると、以前泊まった竹富島の宿を思い出しました。

毎晩18時に出てくる夕食は品数が多く、2泊とも食べきれないほどのボリュームで、満腹を通り越して苦しいくらい食べてしまった夜もありました。

本の中の島の空気が、あのとき自分が過ごした島の時間と重なりました。

「カフー アラシミソーリ」というあいさつ

物語の中で、おばあが口にする「カフー アラシミソーリ」という言葉が、強く印象に残っています。

「幸せでありますように」という意味を持つ、沖縄の言葉です。

誰かの幸せを願うあいさつが日常の中に息づいている、その温かさに触れて、胸のあたりがじんわりと熱くなりました。

この一言だけで、その土地に暮らす人たちの人柄まで伝わってくるような気がしました。

読んだあとに残った、小さな変化

直感を信じて、動いてみること

この本を読んで、勇気を出して行動すること、直感を信じて動くことの大事さを、あらためて感じました。

明青にしても幸にしても、頭で考えすぎる前に、まず動いてしまう強さを持っています。

わたしは何かを始める前に、うまくいくかどうかをつい考えすぎてしまうところがあるので、そのまっすぐさが眩しく映りました。

迷っているあいだに時間だけが過ぎてしまうことは、わたしにも心当たりがあります。

この本を読んでから、小さなことでもまず動いてみようと思えるようになりました。

こんな人におすすめ

沖縄が舞台の本を読みたい方へ

沖縄の空気感を、物語を通して味わいたい方には、まさにぴったりの一冊だと思います。読んでいるだけで、あの独特のゆったりとした時間の流れに触れられます。

実際に沖縄の島に出かけてみたくなった方は、以前書いた竹富島の宿泊記もあわせて読んでみてください。

読む、から、出かける、につながる週末もいいものです。

恋愛小説を探している方へ

じっくり読める恋愛小説を探している方にも、おすすめしたい作品です。

派手な展開ではなく、静かに積み重なっていく気持ちの動きを味わえます。

原田マハさんの作品をどこから読むか迷っている方は、原田マハ作品ガイドにまとめてありますので、よければのぞいてみてください。

むすび|待つことも、動き出すことも

読書している手元

「カフー」を待ちわびるというタイトルの通り、この物語には、待つことの時間がたっぷりと流れています。

それでいて、待っているだけでは何も始まらないということも、静かに教えてくれる一冊でした。

絵馬に書いたひとことから何かが動き出す瞬間を、一緒に見届けてもらえたらうれしいです。

なんとなく本が選べずにいた週末が、この一冊のおかげで、ゆったりと満たされた時間に変わりました。

この記事を書いた人

Lumiと申します。東京都在住・30代の会社員です。
読む・観る・出かける。週末に"教養"という彩りを添える時間を、ゆるく楽しんでいます。
原田マハさんの小説と、美術館と、旅とサウナが好きです。

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