※本記事にはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。
原田マハさんが好きで、著書を片っ端から読んでいます。
文庫を何冊も続けて読んでは、次はどれにしようかと本棚を眺める毎日です。
そんな中で見つけたのが、積読の中に埋もれていた『あなたは、誰かの大切な人』でした。
買った記憶はあるのに、いつのまにか後回しになっていた一冊です。
短編集ということもあり、気軽な気持ちで読み始めました。読み終えるころには、思っていた以上に心を動かされていました。
『あなたは、誰かの大切な人』はどんな短編集?
薄くて短いのに、心に残る6つの物語

収録されているのは、次の6編です。
- 最後の伝言
- 月夜のアボカド
- 無用の人
- 緑陰のマナ
- 波打ち際のふたり
- 皿の上の孤独
講談社文庫で224ページ。本自体が薄く、収録作も一編ずつが短いので、疲れている日でもさらっと読み終えられます。
それぞれの物語が独立しているので、気になったタイトルから読み始めても大丈夫です。
短編とはいえ、それぞれの物語にしっかりとした奥行きがあって驚きました。
どの物語も、家族や身近な人との関係を描いているのが印象的です。
ずっと気になっていた作家の、まだ知らなかった一面に触れられた気がします。
この記事ではネタバレを避けたいので、結末には触れません。あらすじや、心に残った場面だけをお伝えします。
心に残った4編
6編の中でも、特に心に残ったのがこの4つです。
「最後の伝言」|父と母、知らなかった絆

母が亡くなり、告別式の当日に父が姿を。そんな出だしから始まる物語です。
父は昔から、ふっといなくなるクセのある人でした。
仕事もせず、母がほぼひとりで娘二人を育てたので、娘たちは父に呆れと怒りしか感じていません。
けれど読み進めるうちに、娘たちの知らないところに、父と母だけの結びつきがあったことが見えてきます。
そこにあった夫婦の絆に、静かに胸を打たれました。
「月夜のアボカド」|結婚だけが正解じゃない
メキシコ出身のエスターと、友人のアマンダ、そして主人公の女性による物語です。
エスターが作るメキシコ料理やテーブルセッティングの描写がとにかく美味しそうで、家の中の様子まで想像がふくらみました。
エスターが昔、旦那さんと出会った頃の話も出てきて、思わず引き込まれました。
主人公は結婚していないものの、長年付き合っている彼氏がいて、このまま関係を続けるのか結婚するのかで悩んでいる描写もあります。
主人公と近い年代だからこそ、自分ごととして共感しながら読み進められました。
「長く一緒にいれば、結婚しようと言わなくてもずっといるからいい」。そんな考え方があると聞いたことがありますが、まさにこの物語がそうでした。
二人がどんな答えを選ぶのかは、読んでのお楽しみです。
それでも読み終えたあとには、結婚だけが正解ではないと、頭では分かっていたことを改めて感じていました。
「無用の人」|父の書斎で知った愛情
主人公の勤務先の美術館に、亡くなった父から宅配便が届きます。中に入っていたのは、鍵でした。
父は母から「どうしようもない人」と言われ続けていて、娘もその姿を見て育ったので、正直あまりいい印象を持っていません。
その父への複雑な気持ちが、自分にも重なりました。でも、娘のやりたいことや興味を、母よりも尊重してくれていたのは父のほうでした。
父の書斎にあったのは、西洋人に日本の美を伝えるための美学書のような本でした。
そんな本を静かに読みふけっていた父の姿を想像すると、なんだか胸が熱くなりました。
お父さんの印象を踏まえると、こんな本を長年読んでいたなんて、と意外に思いました。同時に、自分の両親にも、知らないところで大事にしているものがあるのだろうと思いました。
ちなみにこの「無用の人」は、2027年1月に原田マハさん監督で映画化されることが発表されています。
監督と脚本を手がけるのは、原作者でもある原田マハさん。ご自身にとって初めての監督作品だそうです。
主人公・聡美を演じるのは蒼井優さん。父の唯一役をイッセー尾形さん、母の柊子役を渡辺えりさん、古道具屋の店主・タク役を永山瑛太さんが演じます。
第74回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門にも選ばれたとのことで、公開が今から楽しみです。
短編を読んでから映画を観たら、また違った味わいがありそうです。
「波打ち際のふたり」|旅先で感じた奇跡
旅行が好きなアラフォーの二人組が主人公です。以前書いた『星がひとつほしいとの祈り』の感想にも、同じ二人が登場しています。
旅先の女風呂での場面が特に心に残っています。
「みんながどこから来て、何をしている人かは知らないけれど、同じ場所で同じ時間を過ごしている。それって奇跡みたいなこと」。そんな一文に、強く共感しました。
同じようなことを、自分自身も考えたことがあったからです。
旅先で出会う人たちとの、束の間だけどたしかなつながりを感じる場面でした。
主人公は東京で働いていますが、実家の姫路では母が認知症になり、老いていく現実と向き合っています。
その部分を読みながら、自分の祖母や母のことを思い出して涙が出ました。
ありきたりな感想かもしれませんが、親を大事にしようと、素直に思いました。
読んだあとに、母に連絡しました

6編どれも印象的でしたが、読み終えてすぐにしたのは、母への連絡でした。特別な用事があったわけではなかったですが、近況を聞くような他愛もない連絡です。
当たり前だと思っていた関係を、この本は静かに思い出させてくれました。
派手な事件が起こるわけではないのに、こんなにも心が動かされる短編集はなかなかありません。
原田マハさんの短編集は、ほかにもいくつか読んでいます。
こんな人におすすめ|年代を問わず楽しめる理由

登場人物の多くは、アラサーというよりはアラフォー世代の独身女性です。
わたし自身とは少し年齢差がありますが、同じ女性として、親しみを持って読み進められました。
だからこそ、年代を問わず女性におすすめしたい一冊です。世代が違っても、どこかに自分と重なる場面が見つかると思います。
家族との関係や、これからの生き方について、ふと立ち止まって考えたいときにも合う一冊です。
原田マハさんの作品はたくさんあるので、どれから読もうか迷ったときのために、タイプ別のガイドも書いています。
積読の中から出会えた、心に残る一冊でした

積読の中で眠っていた一冊でしたが、読んでよかったと心から思いました。
短いのに、じんわりと心に残る物語ばかりです。一編読み終えるたびに、少しだけ手を止めて考えたくなりました。
片っ端から読んでいるつもりでいたのに、今回もまた新しい魅力に出会えました。何度も読み返したくなる、そんな一冊でした。
一日の終わりに一編ずつ。そんな読み方が似合う本です。気になったら、ぜひ手に取ってみてください。
気になった方は、こちらからどうぞ。



